山下 満智子
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
関連リンク |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
2009年09月30日 |
山下 満智子
|
住まい・生活 |
食生活 |
学会論文 |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
社団法人日本冷凍空調学会 学会誌冷凍9月号 小特集
学校や企業における食育の最新事情
大阪ガスの歴史を遡ると,明治38(1905)年の創業以来さまざまな機会に料理活動を行ってきた.料理活動は,当社の食育の原点と言える.大正13(1924)年割烹研究会を開設,現在は大阪,京都,神戸など10箇所のクッキングスクールを運営している.
しかし食環境の変化の中で,家庭で調理をする機会が減っており,外食や市販惣菜,中食(なかしょく)分野への家計支出が増加し,調理時間も減少している.子育て中の家庭においても同様の傾向が見られ,さまざまなダイエットや健康情報への関心は高いが,従来どおりの料理提案をしても料理講習会などに参加していただける方は一部に限られる.
忙しい現代の生活者に、家庭料理の大切さを訴求し共感を得ることは非常に難しい状況が続いている. そこで当社では「調理の効用」を脳の健康という視点で検証し、その重要性をあらたに発信することを目的に,東北大学加齢医学研究所川島隆太教授に学術相談を行い,その指導のもと共同で「調理中の脳活動の計測」を実施した.その結果,調理のどのプロセスにおいても脳が活性化することを確認することができた.さらに親子クッキング中の子どもの脳の活性化についても確認することができた.
この第一実験の結果を受けて我々は,本共同研究を食育基本法にあわせた産学連携の食育活動と位置付け、実験をさら発展させることにした.一つは,当時問題になっていた団塊世代の退職,いわゆる2007年問題に対応することを目的にシニアの男性を対象とした調理の生活介入実験,もう一つが,親子クッキングコミュニケーションの重要性を脳科学の面から解明する生活介入実験であった.両実験において我々は,調理習慣を導入したシニア男性ならびに親子クッキングに取り組んだ親子の脳機能が向上することを実生活において実証することができた.これらの共同研究は、脳トレブームも追い風となりさまざまに関心を寄せていただき、シニア男性が料理を始めるきっかけや親子クッキングによるコミュニケーションの重要性の再発見の機会となった。