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情報誌CEL

田渕 久美子

2010年07月01日

テレビドラマの脚本と「家族」への思い

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2010年07月01日

田渕 久美子

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情報誌CEL (Vol.93)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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-「家族」をしっかりつかまなければ人物は描けない-
 NHKの大河ドラマ「篤姫」以降、私は「家族」を描く脚本家だとよく言われます。私自身はそれを意識したことはありませんが、ドラマを織りなす登場人物たちを描こうとするとき、その人は、どんな環境や人間関係の中で育って来たのかを常に念頭に置いているのは確かなことです。それを脚本として表に出すのか出さないのかは、作品ごとに違いがあるにしても、ある人物を深く掘り下げたいと思うのなら、そのベースとなる部分、その人の家族の背景を私自身の中でしっかりと捉えていなければならないのは、当然のことだと考えています。
 篤姫は、後に自分の実家である薩摩が、嫁ぎ先の徳川家に攻めてくることになるという数奇な運命を生きた人です。もともと残されている資料が乏しい人ですが、ドラマの面白みを考えると、薩摩時代の篤姫と家族、そこで慈しみ育てられた篤姫と、その愛情の深さをきちんと描いておかないと、嫁いでからの篤姫の存在に奥行きが生まれないと当初から考えていました。そこから今度は、徳川の「家」ではなく、「家族」を描くという思いにつながっていったのです。
 また、NHK朝のテレビ小説「さくら」は、家族が見る朝の時間帯の連続ドラマでした。主人公のさくらはハワイで生まれ育った日系3世で、何でも思っていることは口にし、問題があったら、それを解決しなければ気が済まない女性です。そういう、いかにもアメリカ人のさくらと、これまでさまざまな問題はうやむやにしてやってきた日本の家族。文化のギャップが大きい両者の出会いにより、それぞれの家族がどう変わっていくのか。そういう姿を描くこともこの連続ドラマのテーマのひとつでした。
 ここに描かれているいくつかの家族は、もちろんそれぞれに異なるのですが、みんな愛すべき家族。おそらく、ご覧になる人たちが希求してやまない家族の姿だったと思います。もめたりぶつかったりすることがあったとしても、最後には気持ちがつながります。それぞれの人にとっての心のふるさとである人間の関係を描くことで物語の世界が深まっていきました。
 実際、私自身も、そういう家族の中で成長してきました。家族があったからこそ私が今ここにあるし、私もまた新しく家族をつくり、今の私があると実感しています。
 誰もがひとりで生きていけるわけではなく、その人ごとにベースである家族の存在が欠かせません。実際には、そこには嫌なことや煩わしいことも数えきれないほどあります。だからこそ、視聴者の方もドラマの中では理想の姿を見たいという思いがあるのではないでしょうか。これは恋愛も同じ。理想とする恋愛のありようを見たい。私は、もしかしたらそういうものを描いているのではないかという気がします。

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