多木 秀雄
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2010年07月01日 |
多木 秀雄
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.93) |
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-はじめに-
少子高齢化をはじめ産業・雇用など、社会の構造的な変化と相応性を持ちながら、日本の家族の形態は大きく変わりつつある。近代社会を支えてきた核家族をベースとしながら、独居高齢世帯や母子・父子世帯が増加している。また、非親族同士で支え合う世帯もあれば、事実婚や夫婦別姓を選択する世帯も存在する。さらに、同性婚や代理出産をめぐる議論など、さまざまな家族関係のあり方が問われる時代となっている。家族の“つながり”のあり方もまた多様化していると言える。
一方で、最も身近な社会でもある親族との関係が、個々の人生において物心両面で重要な意味を持つことも確かである。家族の多様化が言われる現在、個人および社会にとって、家や家族のつながりとはいったいどういうものであるのか、改めてそのつながりのあり方を考えたい。
-わが国での「家族」についての歴史・変化-
「家族」とは、夫婦の配偶関係や親子・兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団と定義される(広辞苑より)。人類初期の家族は大きな集団をつくって暮らしていた。その後、種々の形態の歴史を刻み、近代になって大きな変化が現れた。わが国では明治20年代以降近代社会の成立とともに、私的領域としての家庭において、「近代家族」が標榜されてきた。その典型的な構成は夫婦と子どもは2〜3人で、子どもが中心的地位を占める家族であり、愛情を持って子どもを健全に教育すること、夫と妻の性別役割分担が明確な形をとったことなどが特徴である。「近代家族」は、戦後、高度経済成長期に向かっての企業社会の進展やさまざまな制度の整備に伴い一般化していった。
1985年に「男女雇用機会均等法」が制定され、99年に「男女共同参画社会基本法」が公布・施行され、さまざまな分野での女性の活躍の場が広げられることとなった。近年、女性の就業化は進み、勤続年数にも長期化の傾向が見られる。また、結婚観についても、多様化かつ個人重視の傾向が見られるようになってきた。
最近では、家庭内暴力、児童虐待などの家族間のトラブルによる事件がマスメディアで数多く取り上げられ、それとともに家族のあり方が問われてきている。「家族」は、時代や社会に伴って変化してきたものである。そして、国民の意識を問えば、多くの人々が大切なものと考え、期待している。社会情勢が変化する中で、さまざまな制度面での環境整備を働きかけながら、個人にとっての家族の役割や意義について考え、よりよい形態を築いてゆくことが大切である。