木全 吉彦
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2012年01月05日 |
木全 吉彦
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住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.98) |
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-人のこころに届くマーケティング-
マーケティング学者のコトラーが著した Marketing3.0 という本があります。副題は From Products to Customers to the Human Spirit で、直訳すれば、「製品から消費者そしてこころのマーケティングへ」といったところでしょうか。2010年4月に刊行され、半年後の9月には『コトラーのマーケティング3.0−ソーシャル・メディア時代の新法則―』というタイトルの邦訳も出ました。
コトラーはマネジメントにおけるドラッカーと同じく、マーケティングの世界では神様のような人です。彼によれば、マーケティング1.0は製品中心、すなわち供給側の視点。2.0は消費者満足いわば需要側の視点に立つものとされます。まだ多くの企業が1.0から2.0への移行の途上にあると言ってよい今、コトラーはさらにバージョンアップしたマーケティングの概念を3.0として提唱したのです。
供給者と消費者が向き合う市場で、シーズ(商品やサービス)とニーズをマッチングさせるのがこれまでのマーケティングでした。しかしマーケティング3.0では、消費者は単に商品やサービスの品質や機能に対する要求が満たされることだけでなく、一段高い次元で、人間としての精神的充足を求める、とコトラーは言います。
「衣食足りて礼節を知る」は、紀元前6世紀の中国の思想家・菅仲の言葉ですが、より便利に、より快適にと人間の欲望はとどまることを知りません。「足るを知る」のは決してたやすいことではなく、衣食が足りても礼節をわきまえない人が多いのもまた事実です。
果たして、私たちは本当にマーケティング3.0の世界を迎えつつあるのでしょうか?
-世のため、人のため、明日はわが身-
今回の特集のテーマである「倫理的消費=Ethical Consumption(エシカル・コンサンプション)」とは、消費者が社会的・普遍的な価値に目覚め、自身のためだけでなく「世のため、人のため」になる消費行動をとることにほかなりません。コーズ・リレーテッド・マーケティング(良き目的の達成支援につながるマーケティング)としては、ベルマーク運動のようにすでに半世紀以上の歴史を持つものもあれば、近年は森林や水資源の保全、地球温暖化防止、飢餓・貧困の解消など、社会的責任を果たすためのさまざまなメニューが企業側から提案され、消費者もそれに応えてきました。