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情報誌CEL

京 雅也

2012年01月05日

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2012年01月05日

京 雅也

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情報誌CEL (Vol.98)

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 東日本大震災の後に迎えた昨年の桜の季節、岩手県のある酒蔵が「東北のお酒を買ってぜひ花見に行って欲しい」とインターネットの動画で訴えて反響を呼んだことが今も心に残っている。悲しみに沈む人が大勢いる時に、浮かれた気分にはなれないのは当然のこと。当時、花見はもちろんさまざまな面で自粛のムードは全国に広がった。しかしそれは、めぐりめぐって被災地の経済に、もう一度打撃を与えることになる。
 そう考えると、何が正しいのかがわからなくなって、「正しさ」の次元の違いに戸惑ってしまう。同時に、改めて感じたのは、消費というものには休みがないということ。経済社会は、消費なしではひとときも回っていかない。
 大抵のモノやサービスは倫理性と非倫理性を併せ持っている。だから「倫理的消費」という言葉に対しては多少偽善的なところを感じる人がいるのも理解できる。これまで大量生産・大量消費の恩恵を私たちは十二分に受けてきた。その結果、周囲はどこから来たのかがわからない品々で溢れている。
 だからこそ、何かを買う時には、これまでよりももっと意識的でありたいと多くの人が考え始め、今「倫理的消費」は世界的な潮流にもなっている。
 とはいえ、要らないものは買う必要がない。だから多分、良いものを長く使うことも、倫理的な消費のひとつだろう。そんな素晴らしい品物をつくった人たちに感謝する。そうした人や企業が、存在価値を十分に発揮できる社会であってほしい。
 フェアトレードでも、「公正な貿易」というように、その本来の価値への公正な対価を支払うことが本質だろう。同時にこう思う。ある品物の良さをちゃんと認めて購入するという行動は、お金だけではない何らかのメッセージを、その販売から流通、そして生産に携わる人たちに届けることにはならないだろうか。
 年末の時期、デパートのお歳暮コーナーに行くと、たくさんの東北の物産が目についた。どうせなら被災地のものをと多くの人は考えているし、供給する側も、今はそうしたニーズに十分応えることが重要だと理解し努めている。同じようなかたちで、消費者の側と供給する側の相互の良い効果によって、やがてはすべての商品がより倫理性の高いものになればと夢想する。これからの倫理的な消費は、なによりも社会における人と人とのつながりを強め、世の中により多くの希望と喜びをもたらすものであってほしい。

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