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情報誌CEL

山本 健慈

2013年03月01日

コラム「心」 学びに向かう志を育てる

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2013年03月01日

山本 健慈

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情報誌CEL (Vol.103)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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「日本の大学生は勉強しない」などと言われる。アメリカの大学生は大半が、1週間に約11時間自主学習をするのに対し、日本の学生の大半は、4時間程度しかしていないなどと比較される。
学長としては、勉強をしてほしいが、アメリカの若者も失業等を抱え必ずしも幸せとはいえないことを考えると、単に時間で比較しても学生の学びを鼓舞しない。そこで、まずは、彼らの意見を聞きたいと、学生たちにこのテーマで懇談を呼び掛けたところ、100人を越える学生が参加し、彼らの学びを語ってくれた。ほとんどの学生が、大学に入り、和歌山の地域にフィールドワークに出て、地域の課題に懸命に取り組む住民、それを支援する教員・研究者の姿を見て、自分がいかに「無知」であるかを知り、学びに貪欲になったと語った。そして、高校までの学びがいかに貧困であったかを知ったと語った。「第一志望が不合格ゆえの入学であったが、和歌山大学に入学して、本当に良かった」という者もいた。 
フィールドワークは、自分の幸せだけでなく、自分の人生の目的と社会の幸せを考える「志」のある学びへの意欲を生んでいる。
他方、「多くの学生が勉強しない方がいい。なぜなら自分が少し勉強すれば、上位に立てる。この方が楽だ」と正直に語った学生もいた。「競争」「比較」のなかでの学びが、「志」を失わせる典型的な事例だ。
競争社会での勝利を動機づけに、人生を鼓舞してきた世代は、時代と人間(若者)の変化をしっかり見つめるべきであろう。
幸い和歌山には、効率化を求め続ける社会において衰退を余儀なくされながらも、それに立ち向かう「志」をもってアクティブに活動する人々がいる。こうした人々との出会いは、「競争」のなかで「志」を失ったり、無気力になったりした学生を蘇生させ、時代にも自己にも果敢にチャレンジする若者に育ててくれている。
和歌山大学の学生は、タイ、インドネシア、ベトナム等アジアのフィールドでも、「志」に目覚めている。
教室・研究室での学び、教員と学生との関係での学びだけではなく、豊かな自然、多彩な人々と出会うフィールドが、スティーブ・ジョブズ氏が2005年スタンフォード大学卒業式でのスピーチで述べた「自分の心と直感に従う勇気を持つ」若者を育てている。

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