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情報誌CEL

倉方 俊輔

2013年07月01日

コラム「衣食住遊」 大阪は建築ミュージアム

作成年月日

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備考

2013年07月01日

倉方 俊輔

都市・コミュニティ
住まい・生活

地域活性化
まちづくり
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.104)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

街にたくさんある建築物は、実はアートなのです。しかも、外観だけならタダで見ることができます。大作から小品までサイズもいろいろ。抽象画のようにクールなものも、味わいのある素材や形で具体的に迫ってくるものもあります。時代の流行もあるので、いくつか眺めているうちに、どれが古そうで新しそうかも、何となく掴めてくるはず。建築物を使うものではなく、見る対象だと頭を切り換えるだけで、街の中にさまざまな「アート」が出現します。
しかも、これらは個々バラバラでもありません。歩き回っているうちに、何か古そうな建物がこの界隈に多いとか、高い建物で頭が揃っているなど、多くのことに気づくに違いありません。
先ほど「使うものではなく、見る対象だと頭を切り換える」と書きましたが、そうは言っても、建築物は使う必要から生まれています。ですから、本社を構えるべき市街には重厚な建物があり、消費の場所では店舗がデザインを競い、それは川や堀が通ったり、駅の近くだったりといった地理と関係します。個々バラバラではなく、場所ごとに建物の傾向があって、エリアの歴史が読み取れます。建築物というアートは集まって、エリアというコレクションをなしているのです。それが集まって、街という大きなミュージアムができています。
アートの鑑賞が画家の名前のお勉強ではないように、建築物の鑑賞も設計者の名称や建てられた年代を確認することとは違います。それらを知っているほうが発見が多いのは確かですが、一番大事なのは、自由に楽しんで、自分なりの名品を決めること。さらに、言葉を交わすことだと、私は思います。
大阪は、東京以上の「建築ミュージアム」です。試しに江戸時代から城下町として栄え、多くの商人が行き交った船場を歩いてみましょう。折り目正しい外観だけでも最高級の仕立てが明らかな「綿業会館」、まるで中南米産のコーヒーのように濃厚で癖になる味わいの「芝川ビル」、精巧な装飾とポップな時計塔が街に変わらない安心感を与える「生駒ビルヂング」……重厚で個性的な建築物が、現在もそこかしこで使われています。
御堂筋に出れば、消費大国アメリカの豪華さを持ち込んだような「大丸心斎橋店本館」や、当時最先端のデザインが今も新鮮な「大阪ガスビル」が目に飛び込んできて、戦前に道路を幅44mにまで拡げ、地下鉄を開通させた大阪の進取性は一目瞭然です。

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