小西池 透
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2015年07月01日 |
小西池 透
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.110) |
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「幸せってなんだっけ……?」。昔、こんなふうに問いかけるテレビCMソングがあったように思います。人間にとって幸せとは何か、時代は移れど決して変わることのない永遠のテーマです。
本号では「幸せな地域の暮らしをつくる」と題し、国内外のさまざまな事例を交えて考察しました。
地域に暮らす人々の幸せを実現することが、その地域の発展につながるという考え方のもと、多くの取り組みが進められています。そのなかで、「幸せリーグ」の活動に見られるように、幸せの度合を指標化する新たな動きも出てきました。
単に経済的な指標にとどまらず、精神的な満足感についても数値で示そうという試みは注目に値します。住民の地域との“つながり・絆”や地域や他者のために何ができるかという“利他の精神”を指標に組み入れている例もあります。まさにマズローの欲求段階説に言う究極の6段階目を追求するまでに、人々の「幸福の高度化」が進んだ証だと言えるのではないでしょうか。
但し、このことをもって、指標が高い地域はみんなが幸せだと結論づけるのは早計です。今後このような指標を活用していくうえで忘れてはならないのは、100人いれば100通りの幸せがあるということです。臨床心理学者で文化庁長官も務められた故・河合隼雄さんは、ご自身の著書のなかで“幸福の効率計算”について述べています。クラシック音楽が好きだった河合さんは、当時としては大金の800円を奮発してコンサートを楽しみました。その帰り道のこと、立ち寄ったうどん屋でわずか10円のうどんを幸せそうに食べる周囲の人たちを見て、自分は果たして80倍の幸福感を感じていただろうかと自問自答します。人が「かけがえのない」と感じるひと時があったなら、それはその人にとって「無限大」の価値があり、そのために使ったお金や時間がどれほど大きいかは問題にならないのではないかと……。
「ナントカ醤油のある家さ。」と続く冒頭のCMは、その意味で、人間の幸福についてのひとつの本質を突いています。幸せは案外身近なところにあるのかもしれません。