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情報誌CEL

深井 晃子

2016年11月01日

コラム「衣食住遊」 きものの力、恐るべし

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2016年11月01日

深井 晃子

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情報誌CEL (Vol.114)

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NYのメトロポリタン美術館でKIMONO展が開催されたのは2年ほど前。レクチャーに呼ばれた。驚いたことには、会場は800人もの聴衆で埋め尽くされていた。通常、私関連の地味で、少し専門的な講演会にこれほどの聴衆者が集まることは、“絶対に”ありえない。「きもの」の力、恐るべし!である。
私は、きものの欧米への影響について、過去から現状までを話した。お気づきかもしれないが、最近、国内だけでなく、国外でも、きものへの関心が高まり、ファッションにきもの繋がりのデザインや技法がたびたび登場する。伝統がどうにも古臭く感じられた時代から、今、振り子は反対方向に振れている。
きものが、西欧の人たちを虜にした時期は、過去に2回ある。最初は江戸時代、オランダ貿易で海外に渡ったきものが、男性のおしゃれな室内着として着られた時。フェルメールの絵に見える。
次が19世紀後半から20世紀初め。1854年、日本が開国すると、浮世絵をはじめ日本品は海外で人気となる。きものもその一つだった。ホイッスラーらの絵画に登場し、パリ・モードにも影響していく。
多くの西欧の人がきものを目にしたのは、1867年のパリ万博だった。正式に参加した日本から、3人の日本人女性が派遣された。きもの姿の彼女たちは、特設された日本家屋で見物客たちにお茶の接待をして、大変な人気を博したという。この時、日本女性のきもの姿は、強いインパクトを与えた。この万博を視察した後の実業家、渋沢栄一は、日記に「蟻が群がるように」彼女たちを見ようと集まった見物客のことや、きものを買いたいという若い女性が大勢いたことを記している。現地の新聞に掲載されたイラストからも、彼が記した情景が彷彿される。
女性雑誌には、「日本風」と称するファッションが登場する。以後、きものの影響がパリ・モードに現われ、きものはモネやマネの絵に取り上げられた。やがて、欧米にはKIMONOという語が定着していく。この時の日本熱は、後にジャポニスムと呼ばれ、特に浮世絵が印象派の画家たちに啓示を与えたことはよく知られる。きものもまた、欧米の生活文化に興味深い影響を残した。
フランスやイギリスの美術館を調査した時、19世紀後半に海外に多くのきものが渡り、それが今も収蔵されているのを確認した。欧米は異国風というだけではなく、きものの高い美意識と品質を評価したのである。
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