林 裕之
2017年07月03日作成年月日 |
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2017年07月03日 |
林 裕之 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.116) |
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最新のマーケット・データの比較分析から
現在の日本では、明治期以降に定められた行政区分に沿って地域の特性を考えることが多い。
しかし、実際はそれ以前の令制国区分による影響が色濃く残っている。
本レポートでは、大阪ガス昧エネルギー・文化研究所との議論を踏まえ、(株)野村総合研究所の最新のマーケット・データ分析により、その実態を明らかにする。
はじめに
一般にマーケットを分析する場合、多くの地域別分析では、エリア別(北海道、東北など)や都道府県別に対象を区分することが多い。しかし、現在の行政区分は1871年に実行された廃藩置県の後、府県の統廃合が繰り返し行われてできた歴史の浅いものであるため、必ずしも地域の特性を十分に反映しているとはいえない。例えば大阪府は、もとは摂津国・河内国・和泉国から構成され、それぞれ異なる生活文化・伝統文化を築いてきたため、大阪府一括りで見るのではなく、3国別で見る方がよりはっきりと地域性を捉えられる可能性がある。また、大阪府のみならず、日本全体の特徴としても、気候や風土の多様性に応じて様々な地域性が存在し、それぞれに文化が醸成されていったことを考えると、旧令制国のように、地形的・気象的・文化的違いにもとづいた区分によって地域性を見ていくことは重要である。
本報告では、近畿の世帯を現府県区分と旧令制国区分で分けてみたときに、区分によって世帯構成にどのような違いが見られるかを、野村総合研究所の「マーケット・トランスレーター」を使った分析結果により紹介する。
全国18万世帯を20のエリアタイプに分類
マーケット・トランスレーターとは、消費者の住所をもとに「町丁目単位」で分析が可能となるGIS(Geographic Information System : 地理情報システム)である。マーケット・トランスレーターには、エリア別に公開されている国勢調査等の統計データをもとに、所得、預貯金、有価証券、貯蓄性保険などの金融資産額等を独自に推計したデータを町丁目別に蓄積している。これらのデータを使って、似た性質のものをグルーピングするクラスター分析と呼ばれる統計的手法により、全国18万の町丁目を20のエリアタイプに分類したものが図1(20のエリアタイプの特徴)である。このクラスター区分は町丁目単位で保持できるため、これを現府県区分や旧令制国区分で集計することで、両者の区分による世帯構成の違いを比較することが可能となる。