情報誌CEL
【対談】耕−文化を問い直す
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
2018年03月01日
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松岡 正剛 池永 寛明 |
都市・コミュニティ
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コミュニティ・デザイン
地域活性化
まちづくり
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情報誌CEL
(Vol.118) |
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生活文化の基盤であった「都市」に埋め込まれた価値を取り戻し、再起動へつなげる連続特集企画「ルネッセ(Renesse)」。
3回目となる今号の対談では、スーパー・アドバイザーの松岡正剛氏とともに、都市・地域における文化のあり方をテーマに語り合う。
地域文化を持ったまちをつくるには
池永:116号の「場」、117号の「交」と続けてきた「ルネッセ」(再起動「Renesse」)するための方法論を考えていく対談ですが、今回はルネッセの中核である「耕(文化を問い直す)」にスポットを当てたいと思います。そもそも私どもの研究所の名称には「文化」がついていますが、「文化とは何か」というのが、実は大きな疑問とするところで、そこをじっくり掘り起こしていければと考えています。
まず「地域の文化」からお話しさせていただくと、私が思い当たるのは「出汁」です。日本料理は出汁から始まりますが、今は調味料を使い、本来の料理の工程を省いてつくってしまいます。そもそも出汁とは、その地域でしか収穫できない食材を利用し、時間・手数をかけて地域独自の味をつくり上げてきたものですが、その地域性が喪失され全国一律になってしまっていると思います。
東北に何度かうかがう機会があり、宮城県名取市の閖上地区について、副市長さんとディスカッションさせていただき、「人口を増やすこと、減らすことをくい止めることが、まちの存在理由ではない。最終的に残るまちは、地域文化を持ったまちではないか」とお聞きしました。かつて確実にあった地域文化を、どのようにその場に注入して再起動できるかが課題だ、と。復興にあたって、国の都市計画的な枠組みだけでは限界があり、「文化」の重要性を感じられています。そこで住民の方々が話し合って、新たなまちの中心に神社を据えられました。
松岡:私も閖上に行ったことがあります。震災で何もかもなくなっていました。神社から始められることにしたのですね。よくぞやりました。
池永:地域に根差した産業をどうつくりうるのか、それが文化になるとはどういうことか、という点では気仙沼の例が示唆的です。気仙沼は震災があったにも拘わらず、生鮮カツオの水揚げ量は20年連続日本一を守られました。船が入港したら気仙沼の産業が一気に動き出すという、漁業と水産と商業のビジネスフローが再構築されたことが、まちを復活させる重要なポイントになっています。