CEL編集室
2018年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2018年11月01日 |
CEL編集室 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.120) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
世界中から優れた研究者たちが集結
1997年に始まるアジア通貨危機をほぼ「無傷」で乗り切った後、シンガポールは知識・イノベーション集約型経済を目指す方向へと一気に舵を切ったといわれる。政府はどんな研究分野を選択的に支援し、そして企業や大学、研究機関とも連携しながら、いかに外からの資本や人材を呼び込んでいるのだろうか?
それを知るために私たちは島の南西部、シンガポール国立大学にも近いブオナビスタ地区に位置するワン・ノースを訪れた。ワン・ノースとは「北緯1度」の意味。広大な公園とも未来都市とも見えるこの場所は、今世紀に入って整備が進んだ200ヘクタールにも及ぶ開発地区であり、建築家ザハ・ハディド氏が意欲的なマスター・プランをつくったことでも知られている。
「ここワン・ノースには約4万6000人の人が働いていますが、その多くが海外からやってきた研究者の方々です。まさに世界中から。もちろん、武田薬品をはじめ日本の企業からもたくさんの方がいらしてますよ」
少し胸をはるように説明してくれたのは、A*STARの産業開発部門(国際)で副部長を務めるワン・ペイイー(WangPeiyi) 氏。A*STARは2002年に設立されたシンガポール科学技術研究庁の略称で、人材の育成や研究開発の促進、研究者や研究機関の国際交流など、さまざまな形で研究開発をバックアップする、国の科学政策におけるいわば司令塔だ。
ワン・ノースのなかでもとりわけ重要なふたつの中核エリアのひとつ「バイオポリス」には、バイオメディカル(生体医学)分野に重点を置いた研究開発拠点が集まる。もうひとつの「フュージョノポリス」は、ITやメディア産業などが文字通り分野の垣根を越えて集まる巨大な複合施設だ。どちらも最新の設備を有するのみならず、周辺の医療施設、大学などとの連携もスムーズに行われる。ここに集まる研究機関を監督し支援を行うのがA*STARの仕事であるが、それはむしろ、いかにここを自由に使ってもらうかに知恵を絞る仕事であるように見えた。