鈴木 隆
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2019年07月01日 |
鈴木 隆
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.122) |
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多様な人たち、異質な相手との開かれた対話「オープンダイアローグ」が、停滞する日本の企業や組織を革新へと導く――。
大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所の鈴木隆研究員が先ごろ上梓した『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』の要諦から、シンプルなコミュニケーションに潜む多大な可能性を探る。
医学の常識を覆す
「オープンダイアローグ」をご存じだろうか。森と湖の国フィンランドの辺境の地で、1984年に生まれた精神療法である。
入院せず投薬することもなく、「開かれた対話」をするだけで、初期の統合失調症が治ったのだ。しかも、投薬した場合よりも、圧倒的に治療結果が良かった。統合失調症には投薬が不可欠だとする医学の常識が覆されたのである。2010年代に入り、世界各地で取り組みが進んでいる。
具体的にどのように対話をするのか。症状の訴えがあると、24時間以内に、本人とその家族、医療関係者が全員で集まって、症状が落ち着くまで毎日話し合うのである。例えば、どこで話し合うのか、自宅なのか病院なのかほかの場所なのかを決めるのも本人である。本人がいないところで、医師たちだけで治療方針を話し合うこともない。本人がいるところだけでオープンに話し合うことを続けると、通常2週間もしないうちに治ってしまうのだ。
日本では、統合失調症で約77万人が投薬治療を受けており、そのうちの16万人以上が入院している(厚生労働省「患者調査」2014年)。日本でもオープンダイアローグを普及させるべく、2015年にオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンが設立され、情報提供や研修を行っている。
日本復活の処方箋
オープンダイアローグが有効なのは、精神医療に限られるわけではない。フィンランドでは、時期を同じくして、同根の「未来語りのダイアローグ」が対人支援において行われ成果をあげている。昨2018年、2月から3月にかけてオランダとデンマーク、7月に中国・深センとシンガポールを本誌(119号、120号)の取材で訪問した。そこで目の当たりにしたのだが、いずれのビジネスの現場でも、まさに「開かれた対話」が意図的に行われ成果をあげていたのである。