CEL編集室
2022年03月01日作成年月日 |
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2022年03月01日 |
CEL編集室 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.130) |
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支えられ、介護されるべき対象と考えられがちな高齢者。
その高齢者が社会的活動に従事し、社会の支え手側に回ることができるという。
そして、そうした活動を行うことで健康と生きがいを手に入れる。
長寿社会を生きるうえでの新しい指針と、それを可能にする仕組みづくりを示したシンポジウム。
大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所が主催し、大阪大学大学院人間科学研究科・老いと死の研究ラボとの共催で行われたその模様をレポートする。
2021年11月2日、「高齢者が地域の支え手側に回る四方良しのまちづくり〜ポストコロナの地域課題に対する一つの解〜」と題するシンポジウムが大阪ガス本社ビルにて開催された。参加者は会場およびオンライン参加者合わせて六十余名、厚生労働省をはじめ、各地方自治体関係者、各地域の社会福祉協議会やNPO、大学関係者などが中心とのことである。サブタイトルにもある通り、喫緊の「地域課題」としての関心の高さがうかがえた。
第1部
高齢期の就労(活動)についての福祉的視点
近年、平均寿命から寝たきりや認知症など要介護状態の期間を差し引いた健康寿命という言葉を聞くことが多くなった。健康に問題なく生活できる時間のことであり、それが延びることで医療費、介護費等の社会保障費の抑制につながるため、厚生労働省も「健康寿命延伸プラン」を推進している。
全国の6000人近い高齢者の自立度の変化を20年間追跡調査したデータ[*1]によると、男性の場合、約2割の人がそれまでの生活習慣がたたって60歳を過ぎた頃から急激に自立度が下がり、日常生活の動作の多くに援助が必要となっていた。7割の人は75歳を過ぎた頃からだんだん自立度が下がっていたが、しかし、1割の人は90歳になってもあまり自立度が下がっていなかったそうで、この人たちの多くが社会的活動をしてきた人であったという。つまり、社会的活動を続けることは、健康寿命延伸につながると考えられるわけである。この考え方を基に進められたのが、宝塚市と協働して行われた高齢者就労トライアルだ。
まず、宝塚市との協働が行われることとなった背景にふれておこう。宝塚市は昭和40年代の開発により人口が急増した街である。
[*1]秋山弘子「長寿時代の科学と社会の構想」『科学』岩波書店、2010