吉永 健一
2009年03月19日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2009年03月19日 |
吉永 健一 |
住まい・生活 |
住宅 |
情報誌CEL (Vol.88) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
さる1月11日、千葉市の花見川団地商店街を会場に、団地マニアが一堂に会するイベント「ダンパク〜大団地博覧会」が団地啓蒙チーム「プロジェクトD」(筆者もその一員)主催で開催された。
写真・模型展示やオリジナルグッズ・写真集販売も行われた会場では、席を埋め尽くした団地マニアたちがトークゲストのユーモアあふれる団地話にくすくす笑いながらも熱心に耳を傾けていた。
「ダンパク」は過去3回とも100名近い観客を集め、盛況を博している。観客の多くは建築業界外の人たち。大阪で開催された前2回には、関東から駆けつけたマニアもいた。そこまで彼らをかき立てる団地の魅力とはいったい何なのか? そして建築業界外のマニアはなぜ団地に引き寄せられるのだろうか?
一言で「団地マニア」といっても鉄道マニア同様その楽しみ方はさまざまである。例えばカメラ片手に団地を観てまわる「撮り団」マニア。鑑賞対象は住棟、給水塔、ランドスケープ、公園遊具、銘板、住棟番号などさまざま。
週末の団地巡りは当たり前。レアな団地を観に行くために全国を旅する「旅団」とでも呼ぶべきマニアもいる。
「知る団」は、団地に関する資料を収集・調査するマニア。建設当時の写真やパンフレット、図面、住宅年報などを図書館で調べたりインターネットオークションで収集して、団地の歴史を調べたりしては悦に入る一種の歴史マニアである。
そして団地に住むマニア「住み団」。憧れの団地に住む…マニアにとっては最高の贅沢である。マニアたちは彼らのことを憧れと嫉妬をこめて“勝ち組“と呼ぶ。
団地マニアの中には団地が観たいがために修学旅行を抜け出したり、知りたいがために国会図書館に通いつめたり、住みたいがために憧れの団地を衝動買いするものもいると聞く。『今すぐ会いたい、とことん知りたい、いつでもそばに居たい』すでに団地マニアにとって団地とは鑑賞するモノではなく、愛すべき恋人なのである。
ほとんどのマニアは建築教育を受けているわけではないが、団地と団地を作り出した先人たちの偉業を、それぞれの方法で知り、多大な尊敬の念をもって団地に接している。特に昭和30〜40年代の公団団地は、当時の設計者のチャレンジや工夫が垣間見え、建物やランドスケープもクオリティーが高いとしてマニアたちの中でも人気が高い。尊敬とは愛の始まりである。団地マニアは団地をながめるうち、知らず知らずに団地を生み出した人々の思いに気がつき、愛するようになるのだ。
団地マニアたちの団地を愛する気持ちは感動的なほどピュアで力強い。筆者は彼らの団地をピュアに楽しむ姿や「住み団」の快適な暮らしぶりをアピールすることこそ団地再生において重要と考えてプロジェクトDの運営に参加している。団地再生が思うように進まぬ今、建築界がマニアたちと手を携えて団地愛をアピールすることは必ず団地を救うきっかけになると私は信じている。いかがだろう?あなたも団地を愛してみては