豊田 尚吾
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2008年03月21日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.84) |
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はじめに
最近の政治行政面での話題は、暮らしに結びついていて興味深い。消費者行政一元化と中国製冷凍餃子問題、大田経済財政担当相の「経済は一流ではない」発言、そして道路特定財源の暫定税率の延長問題などである。例えば、これらはそれぞれ、消費者、生産者、社会人としての私たちの生活に深くかかわる問題ととらえることができる。本稿では、その中でも、善き消費者のあり方とは何か、ということを中心に、これらの話題について考えてみたい。
福田総理大臣が、今年はじめの所信表明演説で、消費者行政の一元化に取り組むことを明言し、にわかに消費者庁構想が取りざたされることになった。ただ、その実現にはさまざまな問題があり、首相の本気度も含めて、いろいろな憶測が飛び交っている。
そのような中、中国製冷凍餃子から有機リン系殺虫剤に含まれる成分が高い濃度で検出され、重体患者を含む健康被害が発生した。この際、行政の対応(省庁の連携)が十分ではなかったと批判されたことをきっかけに、前記構想の必要性が改めて認識されることとなった。
一方で、生産者の立場からも日本経済に対する懸念が持たれている。その一つが大田経済財政担当相の「もはや日本は『経済は一流』と呼べない」発言であろう。また、道路特定財源については、国家財政の問題であると同時に、これからの地方をどのように活性化させていくべきかといった、日本社会全体の問題を考えるきっかけともなっている。
生活充足を図るために、経済力を高め、お金を稼ぐことも必要であるし、稼いだお金を使って豊かに暮らすことも重要である。また、健全なコミュニティを維持することも満足感に直結するだろう。このような状況の中、消費者庁構想という、期待されつつも先行き不透明な課題が政治の世界から出てきた。では、私たちはそれをどのように受け止め、どのように活用していけばよいのか。それを論じるのが本稿の目的である。