豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2007年01月31日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.79) |
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はじめに
季刊誌CEL七八号(前号)の拙稿でも、格差論を生活者のリスク・マネジメントの視点から論じた。本稿では、その中でも生活者の「お金」の管理ということに焦点をあててみたい。昨今の日本経済の成熟化を背景とした将来所得の不確実性増大、生活水準向上に伴う必要コストの増加、消費者金融ビジネスの発展に伴う資金管理リスク拡大(例:自己破産)など、生活における資金管理のニーズは高まっている(※1)。そのような社会的要請に対し、ファイナンシャル・プランニングの「ライフ・プランニング」という手法は、家計管理に対し大きな貢献をしている。しかし、現実に家計簿をつけている家計は全体の三〇〜四〇%であり、厳密な意味でのライフ・プランニングが生活全般に広がっているとは言えない(※2)。実際、家計簿をつけたり、ライフイベント表を作成したりといった行為は、少なからぬ時間的精神的負荷を伴う。ライフ・プラン活用に対するニーズがありながら、実際には専門家が提唱するようなプランニング手法が浸透していないということは、生活者のニーズと提供されている方法にミスマッチがあるのではないか。これが本稿における問題意識である。その実態把握を行った上で、問題解消のための施策を提案することが目的となる。具体的には、ライフ・プランがもたらす便益と、その追求を妨げる障害を実際のデータで確かめる。そして、人間行動の特性を尊重しつつ、支出形態のパターン化とその利用によって、負荷の軽い簡便型ライフ・プランニング実現の可能性を提案する。それが好循環を生み出し、各人のライフ・プランに合わせた取り組みが次のステップとして見えてくるといったプログラムを提供することで、生活者のライフ・プランニング能力の底上げを図ることができると考える。