高坂 健次
2006年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2006年09月30日 |
高坂 健次 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.78) |
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格差の性質
最近の日本社会では、種々の場面における「格差」の問題が話題となっている。所得格差はむろんのこと、学歴格差、資産格差、情報格差、最近では健康格差とかも指摘されるようになった(『中央公論』二〇〇六年八月号特集)。本誌の特集では、さまざまな格差のうち、とくに所得格差が進行していることが話の前提となっている。たしかに、SSM(S o c i a l S t r a t i f i c a t i o nand social Mobility)と呼ばれる「社会階層と社会移動」に関する一〇年に一度の全国調査の結果を見てみても、五分位比率が一九七五年以降変化してきており、最上位階級の所得階層が総所得に占める割合が三一・一パーセント↓三五・一パーセント↓三九・二パーセントと増加しているのに対して、最下位階級の所得階層が占める割合は九・〇パーセント↓七・九パーセント↓七・〇パーセントと減少してきている。この事実だけをもってしても、サンプルの代表性に大きな問題がないかぎり、所得格差の増大は明らかである。所得格差の増大は教育機会の不平等を介在させながら、日本の社会全体の格差構造を拡大再生産しているのは事実だ。
しかしながら私自身は、所得格差の拡大の問題よりも緊要な格差問題があると思っている。それは資産格差である。資産についてのデータはきわめて制約されていて正確な実態を把握することが難しい。したがって、さまざまな補助金(たとえば、生活再建支援金)の支給条件についても、より把捉しやすい所得についての制限を課することが多い。けれども、本当に必要なのは資産についての制限を設けることではないのか。阪神・淡路大震災のときのように、住宅の倒壊など急激で個々人の財政基盤を根こそぎ揺るがす事態が生じたときには、少々の所得があったとしても火急事態から脱することは難しい。住宅を再建できるためには、一時的な相当の出費に耐えられるほどの相当額の貯えが必要だ。