豊田 尚吾
園田 眞理子
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2005年09月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.74) |
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対談
今は、少子高齢化の進展によって住まいの新しいリスクと価値が生まれる端境期
園田 眞理子 Mariko Sonoda 明治大学理工学部建築学科助教授、工学博士、一級建築士
豊田 尚吾 Shogo Toyota 大阪ガス エ ネルギー・文化研究所 主席研究員
大阪ガス エネルギー・文化研究所では、今年のはじめに、全国を対象とした「生活者意識調査」を行った。この調査結果から得られたデータを、各研究員がそれぞれの専門分野から分析を行い、今号と次号で、その研究成果を発表する。
今号は、この調査の中でも、特に「住まいと生活」に焦点を絞って、研究発表を取り上げている。また、同時に外部の専門家にも、現代の生活者意識についての意見をうかがっている。
対談では、現代の生活者にとっての「住まいと暮らし」に関して、建築の専門家であり、かつ福祉の問題などにも造詣が深い、明治大学理工学部の園田眞理子助教授に、生活経営・生活リスク研究の視点をはじめとして、住まい・ライフスタイル研究の視点から、今後の生活者と社会の行方・課題を読み解くというテーマで、お話をうかがった。
住宅のストック増加が住み方を変える
豊田 まず、住宅に関する私自身の問題意識を申し上げます。住宅を一つの財としてどう捉えていくかというのは、これからの課題になると思っています。住まいを売ったり買ったりという、いわゆる一般的な市場財と考えることもできると思います。しかし一方で、それでは捉えきれない「モノ」として住まいを位置づけることもあり得るのではないでしょうか。つまり、住まいというモノは、住み続ける過程で様々な(お金という意味だけではない)投資が必要です。当然、地域コミュニティとの関係も作り上げることになる。そうなれば、その住まいは当人にとって、単なる市場財以上の価値を持つことになります。いわば自分と繋がった、紐のついた存在としての住まいです。都心回帰する、居場所を変えることの意味は、これまで作り上げてきたコミュニティを捨てるということですが、そこにこだわるのかどうかが問題になると思います。先生の著書などを拝見すると、欧米の方では、土地にこだわらずに積極的に住み替えを行っているようです。それは、住宅は財であると割り切って、自分のライフスタイルにあった手段としてとらえているということなのでしょうか。日本では、といっても地域にもよるのでしょうが、自分のアイデンティティに近いもの、紐のついたものとして住まいを考えている方が多いのではないかと私自身は理解しています。これは今後の日本人の生活を展望する上で、一つの切り口になるのかなと思っています。