松本 コウシ
2005年06月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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2005年06月30日 |
松本 コウシ |
都市・コミュニティ |
地域活性化 |
情報誌CEL (Vol.73) |
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境界線の向こうに在る風景
夜もかなり更けた頃、湾岸沿いを覆いつくす倉庫街に辿り着く。さっきまで、霧雨が舞っていたせいか、静まりかえった夜中の倉庫街は霞がかかり、オレンジ色のナトリウム灯により、そのシルエットが幻想的に浮かび上がっています。西日本最大の遊園地があるこのあたり(大阪・此花区桜島付近)も、元々は古くから倉庫や工場が林立する工業地帯。この時間、行き交う車もほとんどない交差点で信号を無駄に長く待たされ、華やかな遊園地区域を通り抜けると、何やら刑事ドラマに出てくるような怪しいにおいの場所に迷い込んでしまいました。殺伐と並ぶ倉庫の間を貫いた真っ直ぐな路を走って行くと、やがてヘッドライトの光に袋小路が不気味に浮かび上がります。車を方向転換したのは、今日何度目だろうか…。 突然現れる境界線に行く手を阻まれ、どちらとも方向がわからず、似たような景色の中、グルグルと迷路のような倉庫街を右往左往。行く手を阻むのは、たいてい工場や堤防。煌々と明かりが瞬き、人に管理されている工場の敷地内を写しても、「眠らない風景」的ではないので、あまり興味がありません。夜、人の姿が消え、猥雑さが露見した時空間で、風景自らが主張し支配している所を僕はいつも好んで探しているのです。