水野 稔
2004年09月30日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2004年09月30日 |
水野 稔 |
エネルギー・環境 |
環境対応 |
情報誌CEL (Vol.70) |
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現在、地球温暖化対策が緊急の課題となっており、京都議定書により温暖化ガスの生半可でない削減が国際的に義務化されている。温暖化の主原因である二酸化炭素の主排出源は化石燃料の消費であり、長期的には水素などの脱炭素エネルギーの開発が期待されるが、当面は省エネに、かなりの量を依存せねばならない。専門家による対応が可能である産業部門や業務用ビルなどの大口需要は省エネ対策が進みつつあるが、住宅と運輸部門は遅れている。住宅の対策が困難な理由は、小規模で数が多い上に、個々の多様性にある。現在、トップランナー方式で機器の省エネ化が図られているが、住宅の省エネはエコライフの普及に期待するところが大きい。また、運輸部門は自動車のエネルギー消費が問題であり、これもハイブリッド車や燃料電池車のような高効率化も重要であるが、公共交通機関をうまく使うなど、こちらもエコライフに期待するところが大きい。
エネルギー関連のエコライフの推進には、関連問題の実感での理解が必要である。例えば、我々は「大量にエネルギーを使用」しており、「多くの環境負荷を排出」している。しかし、こういう知識はあっても、実感がないのが現実であろう。いくつか例を挙げよう。
(1)わが国のエネルギー消費は、石油換算で一人1日約11?であり、重量でもきわめて大量である。また、二酸化炭素の排出量は、同じく炭素で約7?(二酸化炭素では25?)である。なお、一般廃棄物は約1?、産業廃棄物は10?である。このようなデータに改めて驚く人が多いようである。エネルギーが電力や都市ガスの形であると、実体のないものと誤認してしまう。石炭時代にはこんなことはなかったであろう。
(2)一般の事務所ビルで使われるエネルギーを石油に換算し、床に積み上げると、年間で4cm程度になる。ビルの寿命を60年とすると、ビルが寿命を全うするのに、ほぼビル一杯ぶんの石油が必要となる。コンビニなどはこの10倍程度のエネルギーを消費している。
(3)我々は乗用車に何気なく乗っているが、1500ccクラスでは100馬力程度である。いわば、100頭だての馬車に乗っていることになり、とんでもない数値である。ニューヨークのセントラルパークへ行くと、一頭だての馬車が観光用に走っているが、糞尿などに顔をしかめてしまう。このような情報であれば、自動車からの廃棄物も目に見えないだけで、大変なことは想像できるであろう。