弘本 由香里
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2004年09月30日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
都市居住 |
情報誌CEL (Vol.70) |
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近年、「都心回帰」や「都心居住」が、「都市再生」の政策推進とともに盛んに語られ、東京を中心に、数々の都心居住プロジェクト・都市再生プロジェクトが話題を集めている。大阪でも高度経済成長期以降、年々減少し続けてきた人口が二〇〇〇年から微増(前年比)に転じ、とりわけ都心六区(北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区)での人口回復が顕著な動きを見せている。
かねて人口減少に危機感を抱き続けてきた大阪市にとって、近年の人口回復は一面大いに喜ばしい事態であるが、その人口増加現象が、都心における居住の豊かさの形成と実質的に結びついていかなければ、都市の持続的な発展や再生を望むことはできないだろう。
そもそも都心居住のスタイル、都心居住の文化とは何なのか。物理的に都心に住みさえすれば、都心居住のスタイルや文化を実現しているというものではない。まちと関わりながら都心に住み・暮らす生活文化が、持続的に都市の活力とモラルを生み出し支える基盤となった時、はじめて都心居住というスタイルと文化が確立したといえるのではないだろうか。
その意味で大阪は、かつて近世・近代に発達した長屋文化を基盤に見事な都心居住文化が息づく都市であった。にもかかわらず、高度経済成長期から、そのストックは徐々に失われ、現在、都心のあちこちに建設されているマンションの大半には、残念ながらかつての都心居住文化の優れたエッセンスが受け継がれているとは言い難い。
こうした問題認識のもとに、都心居住の現状と課題を踏まえ、持続的に都市の活力とモラルを生み出し支える、都心居住文化の創造について、大阪・上町台地一帯における胎動を追いながら、今後求められる取り組みの方向性を探っていきたい。