豊田 尚吾
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2004年09月30日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
情報誌CEL (Vol.70) |
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消費者の自立とは何か。今号の季刊誌『CEL』の「時の話題」でも取り上げているように、消費者行政の憲法とでもいうべき「消費者保護基本法」が、本年大きく改正され、名称も「消費者基本法」となった。内容の詳細については今号の『時の話題』をご覧いただくとして、本稿ではそれをヒントにして、生活者の自立について考察してみたい。具体的には、「消費者の自立支援」という消費者基本法の理念を、生活者自身がどのように捉え、どのように行動していくべきかについて論じ、最終的には三つの提案を行う。提案の第一は、生活者やその周辺の者が今まで蓄積してきた「生活知」とでも言うべきものの存在を「認識すること」。第二は、それらの生活知を、消費者の自立に役立つように「体系化すること」。第三は、いまだ不十分な生活知を、時代に合わせて「補強していくこと」である。そして、そのような行動を誰がなすのかに関し、個々の生活者の他、企業、NPOといったステイクホルダーの役割について言及し、彼らとのWIN―WIN関係(※)の構築を主張する。
消費者保護基本法から消費者基本法へ
消費者保護基本法は昭和四三年に制定され、長く消費者行政の憲法として機能してきた。それが本年六月二日改正され、消費者基本法として施行されたのには理由がある。基本的には三つの時代の変化があり、それに旧来の消費者保護基本法が対応しきれなくなったからである。時代変化の第一は、制度やルールに関する規制緩和の流れである。従来は、ガス事業法というような各種「業法」により、悪質な事業者を「事前に」排除することで消費者を保護してきた。しかし、新規参入・市場競争を促進することで、経済を活性化していこうという方針の下、事前規制は適切とは評価されなくなった。むしろ、新規参入は自由とし、何か問題が起こったとしても、事後的な救済や罰則の適用を図ることが基本的な方針となったのである。第二は、消費者トラブルの激増である。後に見るように国民生活センターなどへの相談件数は、ここ数年大きく伸びており、消費者が様々なリスクに直面していることが明らかになっている。第三は、企業不祥事の多発である。自動車のリコール隠し問題、食品の偽装表示問題など、例を出すまでもないだろう。