松澤 穣
2004年03月26日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2004年03月26日 |
松澤 穣 |
エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.68) |
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家の重心
スウェーデンの民家園での一枚の写真がある。
学生時代に旅をした時に撮ったものだ。虚飾のない合理性に惹かれ、幾つかの民家園を訪れていた。大きな暖炉とトップライト。窓が無く、暗がりでトップライトからの光に浮かび上がる白い漆喰の暖炉が神々しく、圧倒され動けなくなった。 火と陽。根元的なるもの。その組み合わせが、その地方の典型なのかは分からない。脇にはベッドがあり、住まいの中心であることは間違いないのだろう。まさに家の重心だ。暖炉がエアコンに、トップライトがシーリングライトにとって変わっても、家の重心は大切だ。四角い間取りと家具配置でどうにでもなるとは思えない。壁一枚で周囲から絶縁するわけではなく、方位、周辺環境が影響し、間取りが決まり、窓やテラスで外界と呼応する。家の中とはいえ地続きなのだ。家の居心地には、その地続きのあり様が無意識に影響する。街自体もすでにその地続きの延長線上にある。その大きな視点からしっかりとズームインし、焦点を定めていく。
定まった焦点とは何か。それが家の重心だ。それぞれがいつも座る場所であり、さりげなく人が集まるところ。時にはより象徴的な場所。家は洋の東西を問わず、重心を集積させたものなのだと思う。外観の印象や、内装の趣向を云々する以前に家の重心をきちっと定めることに費やす時間は惜しまない。