弘本 由香里
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2004年03月26日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
都市居住 |
情報誌CEL (Vol.68) |
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二〇〇四年一月、共著で『大阪新・長屋暮らしのすすめ』(橋爪紳也編・創元社刊)という本を出版した(本誌九四頁で紹介)。二〇〇三年三月、大阪市立住まい情報センターで開催した「大阪長屋サミット」で出会った面々が中心になって共同執筆したものだが、筆者は、同書の取材・執筆と同時併行で当連載を行ってきたものである。
当連載でも繰り返して述べてきたが、近世から近代を経て、高度経済成長期まで、大阪は職・住・遊が一体の、都市居住の文化が息づく、見事な長屋のまちだった。都市に暮らす知恵の結晶、それが大阪の長屋だといっても過言ではない。その歴史の蓄積が、他都市に類を見ないほど多様に発展した長屋群と、魅力的なまち並みを生み出していったのである。
そして今、その価値を再発見し、新たな命を吹き込んで、住まい・商いの場として再生する動きが、あちこちで芽生えている。新世代の長屋居住者たちは、長屋の何にひかれ、何を再生しようとしているのか。そこに、未来に向けて本当の長屋再生のあり方を問う鍵を見出すことができるのではないだろうか。
巨大で新しい都市開発よりも、むしろ既存の地域資源を活かした持続的なまちづくりが求められる時代に、私たちは生きているのではないだろうか。そんな時代の大きな流れを背景に、大阪の長屋再生ムーブメントを、人とまちや環境の関係を問い直すきっかけの一つとして捉えてみたい。その思いを反映して『大阪新・長屋暮らしのすすめ』では、都市住宅としての大阪長屋の歴史的変遷・特徴から、再生現場の技術と思想、新・長屋暮らし人の生の声、そしてこれから長屋暮らしを始めたい人への手引きまで、長屋を巡る知恵の数々を収録している。