弘本 由香里
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2008年08月31日 |
弘本 由香里
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エネルギー・環境 |
地域環境 |
新聞・雑誌・書籍 |
NPO法人こども環境活動支援協会『りぃふ』vol.25 |
「カマやナタで物を切ったり割ったりしたことがない」59.8%、「木の実や野草などをとって食べたことがない」57.4%、「わき水を飲んだことがない」53.4%、「日の出や日の入りを見たことがない」50.7%、「生まれたばかりの赤ちゃんを見たことがない」49.8%、「赤ちゃんを抱っこしたことがない」34.5%。
これは、こどもたちの自然体験・生活体験の研究や実践、政策づくりなどに関わっている人たちの間ではよく紹介されるデータなのですが、川村学園女子大学子ども調査研究チームが、2004年に実施した「子どもたちの体験活動等に関する調査」結果の一部です。アンケート調査の対象となったのは、東北地方、関東地方の1都9県から選んだ、小学校21校(1,768名)、中学校11校(1,520名)で、小学4年生から中学3年生(回収率は63.9%)です。地域や学年のバランスを考えて選ばれていますので、都市部のこどもだけではありませんし、偏った年齢層のこどもが対象になっているわけでもありません。
同様の調査が、過去にもたびたび行われてきているのですが、こどもたちの自然体験・生活体験の希薄化は、この20年ほどの間に驚くほどの激しさで進行してきています。たとえば、1984年に文部省青少年教育活動研究会が実施した調査(小学4年生から中学2年生
、約2,000人対象)では、「日の出や日の入りを見たことがない」は19.7%ですが、1995年になると2倍以上の40数%に達しています。冒頭で紹介した調査とは、対象に多少違いがあるとはいえ、2004年時点の類似調査で「日の出や日の入りを見たことがない」は50%超えているという結果があるわけです。一つのデータが物語る背景と予想される未来について、私たちは真剣に向き合うべき時にあるのではないかと思えてなりません。それは、学校や家庭内の問題という枠を超えて、人間と社会の持続可能性に関わる根源的な問題を象徴しているのではないでしょうか。