栗本 智代
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2008年07月14日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
フジサンケイビジネスアイ連載コラム |
一般に文楽というと、3人の男性が1体の人形を遣う人形芝居だが、昭和初期から戦前にかけ、大阪で生まれ庶民に愛されたもうひとつの文楽があった。「乙女文楽」である。
女性一人で一体の文楽人形を操る。人形の首(かしら)は遣い手の頭と紐で結ばれ、遣い手の頭の動きがそのまま人形の顔の動きになる。人形の両手は遣い手の腕に付けた「腕金」と腰で支え、人形の足は使い手の両膝で操る。人形は衣装によっては8キロ以上の重さになり、女性一人で支えるには、体力と技術が必要だ。
吉田光華さんが乙女文楽と出会ったのは、子育てが一段落してようやく自分の時間を持てるようになった頃。戦前活躍した吉田光子さんに師事、吉田光華を襲名したが、あくまで趣味と考えていた。
3歳から日本舞踊をはじめ12歳で若柳流名取になるほど踊りが好きで、そのしなやかな動きが、上方落語の重鎮、故5代目桂文枝さんの目に留まった。「天神山」の落語で一緒に出演してほしいと頼まれたのがプロ入りのきっかけとなり、桂文枝さんとの共演で数々の舞台を重ねた。
「小さい頃、母にあの人形が欲しいとねだったのが文楽人形でした」と微笑む。人形の衣装、髪型や小物、そして振り付けと、自分で創作する。「演じている時は一心同体で、私の踊りが人形の動きになります。でもその日によって、人形が思うように動いてくれなかったり、人形の方が先に踊り出すような時もあるんですよ。」
女性一人遣いならではの柔軟さが魅力である。義太夫はもとより長唄・小唄・歌謡曲・琴・筑前琵琶・民謡・尺八とあわせて…だけではない。文楽の吉田文吾氏やモダンバレー、東方女子楽坊とのコラボレーション、椎名林檎のCDアルバムのCM出演、雑誌グラビアへの人形の掲載など、幅広いジャンルで活躍している。
数少ない乙女文楽のプロとして、地方や海外の公演も多い。来月は「ワールドミュージックフェステイバル」でオランダを中心に10ステージが予定されている。