弘本 由香里
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研究領域 |
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備考 |
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2007年03月30日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
新聞・雑誌・書籍 |
大阪府文化団体連合会『大阪府文化芸術年鑑2007年版』 |
新たな枠組みのデザインと実験
アートNPO から、地域の文化施設、経済団体や行政、数々のまちづくり活動団体まで、さまざまな主体とネットワークが地域をベースに有機的にうごめき、試行錯誤を繰り返しながらも少しずつ成長し始めているさまを、一年前の同年鑑で2005 年の「地域文化」の動向として紹介した。あわせて、そうした動きを支えるコミュニケーションデザインのあり方や、新たな公共の枠組みが求められていることにも言及してきた。
2006 年は、まさに各主体の連携による実践の枠組みが意識的にデザインされ、新たな公共のシステムとして地域での実験が始められる、そんな段階に差し掛かってきたことを如実に物語る出来事の数々が現れた1 年であった。地域との関係の中に文化を位置づけ展開していく志向性、文化の蓄積の中に地域の未来像を見出していく志向性、その両者が重なり合い、地域と生活・文化の応答関係がいっそう明確に認識され、大きな流れとして定着してきている。各地で「まち歩き」という営みに、強い関心が寄せられてきていることにも、こうした現象の一端を捉えることができる。
地域の博物館と市民の力
地域と文化をめぐる画期の到来を決定的に印象づけたのが、2006年4月下旬から6月上旬にかけて吹田市立博物館で開催された「千里ニュータウン展 ひと・まち・くらし」であった。公募の市民委員44人が主体的に企画・運営を担い、まさに市民がつくる特別展、市民委員と博物館学芸員による協働作業が成果を上げた。わずか1カ月半の会期で、前年度の全入館者数1万7千人をはるかに上回る2万2170人の入場者を記録し大きな注目を集めたのである。この成果は、多くの公共博物館が各地で集客に苦しみ厳しい運営状況に置かれている中で、改めて地域博物館が市民に必要とされている存在であり、市民によって支えられる存在であることを、示してみせた事例でもあった。