栗本 智代
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2007年02月27日 |
栗本 智代
|
都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
フジサンケイビジネスアイ掲載コラム |
近代モダニズム再見?< 新井ビル「五感北浜本館」>
北浜のビジネス街に華やかな店がある。洋菓子専門店「五感・北浜本館」である。堺筋に面した「新井ビル」の一・二階に、一昨年の春オープンした。入り口の小さな階段を上がると、吹き抜けのアトリウム空間が広がり、甘い香りとともにたくさんの菓子が迎えてくれる。週末も営業することで、北浜がおしゃれな街へと変わってきている。
新井ビルは、大正十一年、河合浩蔵の設計で大日本報徳銀行として建設された。ゼツエッション様式のファサードや茶色のタイルなど当時最先端の流行を取り入れた近代の名建築である。建物に深い愛着をもつオーナーが世代をこえて、手間隙かけて保存に苦労してきたときく。「五感」代表の浅田美明さんは、東淀川で洋菓子専門店を営むが、百貨店に出店する際この新ブランドを立ち上げた。「大阪銘菓を創りたいと思い始めた時、新井ビルと出会った。北浜の街や建物の雰囲気に魅せられ、ここを拠点に大阪ブランドを構築し、街づくりにも貢献したいと考えた」。改修は最低限にとどめ、高い天井、二階の回廊や個室など銀行時代の重厚な雰囲気が残された。自然素材にこだわった菓子を建築空間とともに贅沢に味わえる、貴重な「場」である。