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栗本 智代

2006年05月30日

手づくりの寄席をめぐる

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2006年05月30日

栗本 智代

都市・コミュニティ

地域活性化

新聞・雑誌・書籍

「大阪春秋」平成18年夏号

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

大阪で「寄席」というと、例えばサンケイホールやワッハ上方、文化会館などのホールでの催しをイメージする人も少なくないだろう。しかし実は、地域密着型の小さな寄席が意外と数多く点在している。

たまたま野田を探索した時に、そば屋の2階で開催されるという寄席にふと興味を持ち足を運んだ。客席はぎゅうぎゅう詰め。若手の時は、聞いているこちら側も半分冷や冷や、半分にやにや…。しかしトリではベテランの落語家がじっくりと聞かせる。落語家と客の距離が非常に近い。落語をはじめて身近に感じ、寄席の底知れぬ魅力を垣間見た気がした。それぞれの「場」を創る人によりまた違った味わいがあると思い、あちこち寄席をめぐった。ここでは、中でもより地域に密着した手作り感あふれる寄席を紹介する。

おそばと落語の会

1978年頃から、落語の寄席として注目されているのが「おそばと落語の会」である。阪神電鉄野田駅から徒歩数分のところ、高架下にあるそば屋「やまがそば総本家」の二階の座敷が、毎月第三月曜の夕方以降、寄席に様変わりする。襖やテーブルが取り払われた宴会場に座布団が敷き詰められ、何十人ものお客さんが、高座を緩やかなコの字型で囲むかたちに座って待ちかねている。登壇するのは、笑福亭三喬さんを中心とした有名無名の若手落語家。五十人も座ればいっぱいになるほどの小さな空間なので、表情や声色が手にとるようにわかり、つばも飛んでくる。トリの三喬さんの噺でじっくり話芸を味わったあとは、大喜利勉強会である。それぞれの落語家さんのキャラクターが浮き彫りにされ、名前を聞いたことのない若い噺家さんでも親近感が生まれる。しかし、この会の本当のトリは、オリジナルのそばだ。プログラムが終わって1階に降りると、客全員にそばがふるまわれる。

 

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