弘本 由香里
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2005年11月20日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
新聞・雑誌・書籍 |
(社)日本建築材料協会機関誌「けんざい」203号(2005年11月20日)掲載 |
水害の教訓はどこに
震災・水害と、毎年のように大きな災害が日本のどこかで発生している。1995 年の阪神・淡路大震災は、住宅の耐震性を高める技術開発や地域防災の必要性を顕在化させる大きな引き金となった。建材業界でも、さまざまな取り組みが生まれたのではないだろうか。一方で、近年相次いでいる、台風や集中豪雨による大規模な浸水被害等は、どんな教訓を残し、その教訓はどんなふうに活かされようとしているのだろうか。私的な話を持ち出して恐縮ではあるが、実は今年9 月の台風14 号で実家(山口県岩国市)が床上約1 メートルの浸水被害を受けた。木造の名橋「錦帯橋」の橋脚の一部が流されたことや、高速道路の一部が崩落し犠牲者を出したことは全国規模で報道されたが、台風の被害はそれだけに止まらず錦川流域の約2 千世帯が浸水している。その後、私自身、災害復旧のためにたびたび実家に帰り、いまだに作業を続けているところである。
戦後、上流に複数のダムが築かれて以降、今回ほど大規模な水害は起きていなかった。被害の背景には、予想を超えるほどの集中的な豪雨とともに、かつて雨を蓄えてきた田畑の多くが宅地化され、山林も荒れ、土地が急速に保水力を失っている影響も作用しているのかもしれない。地方都市や農村部が開発され、水害の記憶や防災の知恵が途絶えようとしている刹那に、今回の水害は襲ってきたように思えてならない。
兎にも角にも、水害からの住宅の復旧は、生まれて初めての経験となった。その経験の中で、最も気になったことの一つが、「建材」の質である。