豊田 尚吾
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2003年07月16日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
ガスエネルギー新聞2003年7月16日掲載 |
最近、百貨店販売の現場では、セール期間は一時的に売り上げが増加するものの、特売が終わると一転、急激に客足が遠のくとのことです(「変化探る足踏み景気―不安抱え選別消費」日本経済新聞7月2日付)。そこには売り手の仕掛けに乗らず、上手に立ち振る舞う消費者の姿がうかがわれます。
では、消費者は賢くなったと言っていいのでしょうか。一方で消費に関するトラブルは増加しています。国民生活センターなどが受け付けた苦情相談件数は、1991年度の17万件から2002年度の83万件へと5倍近くになっています(図表)。これは購買活動に伴うリスクの増大に対し、戸惑う消費者の実態を明らかにしています。
今年5月、国民生活審議会(消費者政策部会)は「21世紀型の消費者政策の在り方について」と題する報告書を取りまとめました。そこでは、私たちを取り巻く生活環境の変化に応じて、消費者政策における消費者の位置付けを「保護」から「自立」へと転換することを提言しています。
つまり、従来供給者である事業者と比較して弱者と見られていた消費者は、保護の対象であったのですが、近年のトレンドである市場メカニズムの活用のためには、消費者は「自立した主体」として行動することが求められているというものです。もちろん安全や健康のように、依然として需要側の立場が弱く引き続き保護的政策が必要な分野があることは指摘されています。また、消費者の自立を担保するようなルール作りや環境の整備が重要であり、そのための方策についてもいろいろと提案がなされています。とはいえ、やはりそれで十分かという疑念がぬぐえません。