栗本 智代
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2003年07月15日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
新聞・雑誌・書籍 |
「建築と社会」建築とノスタルジー特集2003.9月号 |
大阪で仕事を続けていると、歴史的な近代建築物の中に案内されることが度重なってくる。当初は「いい雰囲気の場所があるんだなぁ」としか感じなかったのだが、大阪が最も成長を遂げた近代の歩みを知るにつれ、モダニズム精神の象徴である遺産として改めて見直したくなった。建築の専門家ではないため難しいことはわからないながらも1つ1つめぐってみると、さらに興味が深まり、建物内での食事やギャラリーなども楽しみ出すと、時間がいくらあっても足りない。
大阪市における近代建築の解体率は約66%にのぼるという報告があり、この20年ほどで急速に消滅していることがわかっている。(「大阪市都心3区における近代建築の保存・活用に関する研究」平成12年度日本建築学会近畿支部研究報告集より)。確かに今日、近代建築の保存は容易ではなく、建物の老朽化やOA化への対応、賃貸オフィスとしての経営困難など、ソフトハード両面で問題があり、民間の場合は収益を上げながらの保存が課題となる。
しかしビルのオーナーや店主の中で、こだわりと誇りをもって、各々の建築物に関わっていらっしゃる方も少なくなく、独自の味わいを生み出している。北浜・船場界隈からいくつか、新たな試みとして特長ある事例を紹介する。
<北浜レトロ〜創建時のコンセプト“イギリス”へのこだわり〜>
北浜の旧大阪証券取引所の北向かいにあるビルで、明治45年に竣工、もとは証券取引業者の店舗で、後に入った桂隆産業が倒産後、
小山寿一さんが買い取られ「北浜レトロ株式会社」を設立された。
このビルは、イギリス人に習った日本の建築家が、当時のイギリスの建造物を想像して建てられたようだ。現オーナーの小山さんは、幽霊ビルのようになっていたのをもとの姿にもどしてあげたいと、建築時の明治末の雰囲気を大切に、自身の設計・デザインにより補修・改装された。そして、ティールームとアンティーク・雑貨の店舗として再スタートし、時代に迎合せずブームを追いかけない、クラシックなイギリスにこだわった「場」づくりが行われている。