豊田 尚吾
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2003年05月01日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
ガスエネルギー新聞2003年5月1日掲載 |
テロ、戦争、SARS(重症急性呼吸器症候群)のトリプルパンチで、ゴールデンウイークの旅行予約獲得が苦戦したとのことです。例年より6割も安いツアーが出回るなど、事態は深刻です。実体のないサービスという財は、イメージに大きく影響を受けます。大規模な航空機事故などがあると、しばらく飛行機には乗らないでおこうと考えるといったことは、誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。
しかしながら、SARSが流行しているから旅行をあきらめることと、航空機事故が起こったから飛行機に乗らないことは事情が異なります。前者は伝染病の情報が、次回に旅行に行く際のリスクを高めるという意味で合理的です。それに対し後者は航空機事故が起きたからといって、次回乗る飛行機の事故率が高まるわけではないのですから、合理的だとはいえません。むしろ2度と事故が起こらないように、より厳しいチェックが徹底され、事故のリスクは低くなることすら期待できます。このような消費者行動において、鍵となるのがヒューリスティクス、あるいはヒューリスティックといわれる概念です。
ヒューリスティクスとは、直感的判断のような、簡便化された判断の方法として理解されています。意思決定において、前回までに述べたような、順を追って判断していく方法(アルゴリズム)は、確実性が高いかもしれませんが、膨大な情報処理という努力を必要とします。しかし、日常生活において我々は時間などさまざまな制約の下にあり、すべての情報を吟味することは不可能です。そこで既に保持している固有の知識を利用して、一部の情報だけで判断を行うことがしばしば見られます。
これをヒューリスティクスというのですが、多くの場合蓋然性の高い判断を導くものの、最適解を与える保証はない、一方で問題解決の効率を非常に高める、といった特徴を持っています。