豊田 尚吾
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2003年03月19日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
消費生活 |
新聞・雑誌・書籍 |
ガスエネルギー新聞2003年3月19日掲載 |
「金持ち○○、貧乏○○」といった、経済面での処世術を論じた書籍が多数出版され、結構売れ行きがよいと聞きます。ある本によれば、それらは結局、以下の三つのいずれかを述べているにすぎないとのことです。すなわち?収入を増やす?支出を減らす?資産運用をうまく行う。確かに、まずフロー(収入、支出)とストック(資産)に分けて考え、両者の価値増大をそれぞれ目指すというのは経済合理性に則った考え方です。
ある商品を買うか否かといった場合の合理的な意思決定は、基本的にはこの考えの延長線上にあります。購買はフローの概念に含まれ、購入に伴ううれしさ(便益)が支払いによる負担感(費用)を上回れば購入が決定されます。資金の制約がある中、複数の購買候補がある場合には、もっとも純便益の大きいものから順番に採用されます。
こう言ってしまえば当たり前のようですが、消費者がリスクに直面している場合には状況はやや複雑になります。購入候補の便益や費用がどのようなものであるのかが、購入時点では必ずしも明確ではない場合を考えてください。それに対するもっとも基本的な対処方法は、金銭換算した場合の「期待値」を求めることです。
例えばリスク財の典型として「くじ」があり、1万円が当たる可能性が50%、2万円が当たる可能性が50%であれば、その期待値は(1万円×0.5)+(2万円×0.5%)=1万5000円となります。これがつまり平均的に得られると期待できる便益を表しています。このとき、くじの値段(費用)が1万1000円なら、そのくじを買うという意思決定が可能になります。一方、そのくじの値段が1万4900円ならどうでしょうか。期待値で判断すれば、純便益は正と言うことになりますが、実際には多くの人はこのくじを購入しません。期待値による判断が万能ではないということで、新たに提示された考えは、判断の基準を期待値ではなく、「期待効用」に置き換えるというものです(期待効用仮説)。