濱 惠介
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2002年08月11日 |
濱 惠介
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住まい・生活 |
住宅 |
新聞・雑誌・書籍 |
8/11読売新聞「論点」に掲載 |
日本の住宅は平均三○年くらいで建て替えられている。欧米の百年前後と比べて、あまりにも短命だ。時間が醸す味が出る前にゴミとなってしまい、その繰り返しではいつまでも本物が蓄積されない。
およそ四年前、私は転職に伴い永住の住まいを関西で求めることになった。歴史的蓄積と自然環境の身近な関西には、首都圏に比べより質の高い暮らしの可能性を感じた。
近年とみに話題になる地球温暖化の危機やエネルギー資源の有限性を考えると、住宅づくりでも省エネルギーを真剣に考える必要がある。資源の枯渇や地域の廃棄物問題と関連付ければ、簡単に取り壊したり新築したりすることもためらわれる。
そこで、築後三○年近いが、しっかりした構造の戸建て住宅を購入して、環境にできる限り負担をかけないという目標で改修することにした。既存の資源を活かし「環境共生住宅」に再生した訳だ。
暖房エネルギーを減らすため、外壁に外側から断熱を施し、窓ガラスを二重化した。内装材には健康にも良く、廃棄された時に問題のない自然素材を優先して選んだ。
太陽エネルギーを積極的に利用しようと、太陽光発電や太陽熱給湯などの設備を設けた。また潤いを求め屋上テラスには様々な植物を植えた。
そんな住宅に暮して約三年、住むこと自体が楽しく、環境やエネルギーに対する感覚が澄んで来た。
太陽が暖めた湯で風呂に入るとする。物理的には同じ湯でも、自然の恵みに感謝したくなる。また入浴が遅くなると湯がぬるくなるので、自然のリズムに生活を合わせざるを得ない。それが爽やかに感じられる。
太陽光発電の余剰分は、普通の電灯料金と同じ単価で売れる。「せっかく売れるものを浪費できない」と、無駄をなくす総点検をした。様々な工夫の結果、年間の発電量が消費量を二○%上回った。省エネ行動が伴えば、わずか二○?のパネルで住まいの電力自給は可能なのだ。
別な角度から見れば、住人はエネルギーの消費者であると同時に生産者へ立場を変えている。それが環境への意識改革を後押しする。より賢い消費者になったということか。