弘本 由香里
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2001年12月28日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
その他 |
新聞・雑誌・書籍 |
大阪を代表する、庶民の商店街として名高い「千林商店街」。周辺の町並みは、幸運にも戦災を免れ、戦前に建てられた端正な長屋が、今なお路地の所々に姿を留めている。そんな商店街と長屋が織り成す、懐かしい町の風情に引き寄せられるように、友人が昭和1 2 年に建てられた長屋の一軒を、隠れ家的に借りた。
貼り重ねられた壁紙を一枚一枚はがして土壁を蘇らせ、床や天井、柱や建具の汚れを払い、床の間に花や小物を飾ると、みるみる住まいに生気が溢れてきたという。
おしゃべりに食事に、時には静かな音楽や暮らしを彩る美術・工芸品を楽しむ場として、長屋は心安らぐもう一つの住まいに育ちつつある。
思えば、そもそも住まいには、祈りや遊び、季節ごとの行事の数々、生活文化を育む舞台としての要素がふんだんに盛り込まれていたものだ。一軒の長屋との出会いが、忘れかけていた住まいの力を思い出させてくれた。
実は、商都大阪を代表するもう一つの商店街「天神橋筋商店街」の一画に、文化の健忘症から回復するためにもってこいのスポットが生まれている。大阪の住まいと暮らしの歴史・文化を追体験できる「大阪市立住まいのミュージアム」だ。
ビルの最上階に上ると、実物大でリアルに再現された江戸時代の大坂の住まいと町並みが眼の前に広がる。新年は4 日から迎春のしつらいで、日曜・祝日には町家衆( ミュージアム・ボランティア) が登場し、コマ回し、羽子板、ふくわらいなど、町を舞台に数々の遊びも繰り広げられる。
懐かしい正月風景が、町に人に新鮮な風を運んでくれそうだ。