弘本 由香里
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2001年10月01日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
CELレポート (Vol.11) |
今年(2001年)4月に、全国に先駆けて京都橘女子大学が文化政策学部を開設するとともに、大学付属のシンクタンクとして文化政策研究センターを開設した。同学部長には、文化経済学の池上惇氏(京都大学名誉教授)、同研究センター所長には人類学の端信行氏(前国立民族学博物館教授)が就任している。大学改革の流れの一つとして注目したい動きであり、また「文化政策」という分野が日本社会の傍流からメインストリームでの議論に乗り始めた動きとしても興味深い。
本書は、京都橘女子大学文化政策学部の開設に先だって、文化政策とは何か?について、関係分野の論者・実践者を集め、文化政策の総合的な入門書としてまとめられたものである。シンポジウムの記録に加筆するという形をとっていることや、入門書という性格上、深い論述ではないが、「文化政策」がなぜ重要課題として取り組まれる必要があるのかという問いに対して、横断的領域からその必要性を浮かび上がらせる構成となっており、「文化」と名のつく仕事に従事している者であろうがなかろうが、属性横断的にそれぞれの生活や仕事との関係の中でその意味を捉えてみることができる。
特に企業活動との関係という面で「文化経済分野」の言及は傾聴に値するだろう。執筆者の一人・中谷武雄氏は、経済社会システムの構造転換、?経済のサービス化・ソフト化、?産業活動の担い手の変化(多元的経済社会への移行)、?地球環境問題の深刻化、?行財政システムの転換(グローバリズムに対するオールタナティブとしての地域経済や現物経済)が、従来型の合理性や効率性を追求する経済の枠組みに根本的な変更を迫っていることにふれ、それに対する新たな体系づくりの試みの一つとして、文化経済学の提起について次のような特徴を指摘をしている。