豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2001年10月01日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
学会論文 |
経済地理学会での発表内容(後編)社外用 |
地域通貨は様々な概念が混在しており、それを整理した上で考察しなければ、議論がかみ合わない。そこで視点を?地域経済活性化、?貨幣論、?コミュニティ論、?価値論の4つに分類し、地域通貨が持つといわれる可能性をそれぞれ検討する。可能性は地域限定利用など、地域通貨の持つ特徴から導かれるものであるが、それぞれには克服すべき弱点があり、さらにはより本質的な課題も存在する。例えば現実問題として、多くの地域通貨の取組において、取引が活発に行われないという事実がある。作家の村上龍氏は、地域通貨においても、交換するものを持たない個人が、むやみに地域通貨に期待することの非現実性を指摘している。地域通貨の「可能性」は多く指摘されているが、むしろ「課題」を明確に意識し、功罪両面のバランスをとることに気をつけないと「幻想」を語ることになる。
そのような場合に必要なことは、理念・目的に対する、施策のポジショニングの明確化、戦略的対応である。拙稿では経済学的観点から、地域通貨による地域経済の活性化に焦点を絞って検討を行う。そこでの問題意識は、経済的合理人の仮定の超克、アノマリー(例外的事象)の重要性認識、地域通貨と他施策との競合の可能性とポジショニングの必要性、機能の観点の重視である。機能の観点から地域通貨を評価するにあたっては、企業のマーケティング戦略は様々な示唆を与えてくれる。特に、コンセプトの移り変わり、パラダイムの変遷を見ると、社会との関係構築を指向する現代のマーケティングには、地域通貨の理念と重なる部分があることに気づかされる。地域通貨のプロジェクトとしての評価は、マネジリアル・マーケティングの観点から検討することができる。
地域通貨制度と企業活動は、ある部分で競合する可能性がある。一方で、目的や手段が異なるため共存は可能であり、むしろコラボレートして、他施策・組織とのwin-win関係構築をはかることが重要である。その場合、機能という視点からは、厳密な地域通貨制度にこだわる必要はなく、例えば、企業のポイント制度、ベルマークのような収集ボランティア制度などを参考にすべきである。今後も多様な形で検討することを通じて、地域通貨の持つ理解を深め、実践面での高度化を図っていく必要がある。