濱 惠介
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2000年12月30日 |
濱 惠介
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住まい・生活 |
住宅 |
情報誌CEL (Vol.55) |
地球規模での環境危機が叫ばれる今日、住まいのレベルで何をすべきか、または何をしてはならないのか。問題を整理する手掛かりは、住まいが環境に対しどんな関わりを持っているのかを明らかにすることにある。
前号でご紹介した奈良学園前の「再生エコハウス」について、今回は健康性、物質循環、「緑」などの視点で住まいと環境の関係を考える。
住まいと健康と有害物質
住宅は周辺環境と深い関係を持つと同時に、室内で生活する人間に対しても様々な影響を及ぼす。住宅は外界から体や財産を守るシェルターとして機能としての役割は勿論、明るさや温度、空気の質など、快適な室内の条件を備えているかどうかが常に問われる。 環境問題の原因と影響が世代を超えたり、遠い場所でも発生するのに対し、健康問題は直接当事者に降りかかる。環境の痛みをより直接的に感じさせる。
ここで注目するのは、住宅が住まい手の健康に深く関わっている点である。いわゆる「シックハウス症候群」という形で注目された現象は、建材に含まれる様々な合成有機化合物が、高気密な建物と相まって引き起こした現代技術の落とし穴であった。締め切った部屋でのエアコン利用で機器内の結露でカビが発生し、問題を引き起こすことも報告されている。
最近は見直しが進み、各ハウスメーカーも「健康住宅仕様」を謳っているところが多い。では、何が問題なのか、再生エコハウスにおける実践を振り返りながら考えてみる。
最もポピュラーな揮発性有機化合物(VOC)がホルムアルデヒドである。主として接着剤の防腐目的に使われる。今や我が国の代表的壁仕上げ材であるビニールクロスは吸放湿性がないので、裏面のでんぷん糊は結露の湿気でカビが生じ易く、その防止にホルムアルデヒドが用いられてきた。
この問題の解決には、ビニールクロスを止め、ホルムアルデヒドの入っていない接着剤を使えば良い。ただし、結露を起こさない外壁(外気に面した壁)の設計が不可欠である。
居室内におけるカビの発生は、外壁に接した部屋の隅や家具の裏側などで起きやすい。居室の結露を防ぐには壁の断熱性を高めて壁面の温度を下げないことが第一で、換気を良くすることや珪藻土など吸放湿性のある壁材料で湿度を調整することも有効である。