栗本 智代
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2000年10月20日 |
栗本 智代
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
講演録 |
兵庫県阪神シニアカレッジでの講演 |
2001年春、大阪の此花西部臨海地域に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が開業する。ハリウッド映画を主題とするテーマパークであり、マルチメデイア等最先端の映像・音響や情報通信など新しい都市型産業を育成する場としても期待は大きい。
「国際集客都市」を目指す大阪にとって、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は、都市進化のプロセスで非常に重要な位置を占めると考えられる。現在もこの巨大遊園地の開幕を目前に、都市基盤の整備、都市機能の更新への取り組みに拍車がかかり、勢力的に進めている真っ最中である。本校では、大阪の複合再開発の歴史における集客装置やイベントの役割に着目し、集客都市としての今後の可能性と課題を展望してみたい。
1.産業都市から集客都市へ
大阪の繁栄を振り返ってみよう。近世は「天下の台所」として全国の物資が大阪を拠点に流通した、まさに「商いのまち」であり、近代には「東洋のマンチェスター(煙の都)」と呼ばれるほどの工業都市として発展した。戦後も今日まで「商い」「ものづくり」のまちであることへのこだわりと誇りが、大阪の住民に根付いている。しかし今日、大阪の都市人口が減少する一方、ビジネス客を中心に短期や長期に滞在するビジターが激増している。また、今世界中で年間5億人以上の人が旅をしており、2010年には2倍の10億人に増えると言われている。中でもアジア間の交流が盛んになると予想され、観光市場の中でいかに生き残るか、都市間競争が激化すると考えられる。国内・海外のビジターが、どのようにまちを活用し交流するかが重要になってくる。都市は、情報や付加価値を創作し提供する場として、従来型の産業都市から集客都市への変容が迫られている。
今日では大阪も「国際集客都市」を提唱し、ビジター産業の振興を意識した都市開発に着手し始めている。特に最近では、関西国際空港をはじめ新たな国際会議場やスポーツ・複合商業施設の誕生により気運が盛り上がっており、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」がさらに大きな契機となることは確かである。