豊田 尚吾
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2000年10月29日 |
豊田 尚吾
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都市・コミュニティ |
地域活性化 |
WEB |
電脳山田村塾・地域情報化プラン・奨励賞 |
はじめに
近年の情報技術の発展はめざましい。しかし、情報化したからといって、社会が良くなるとは限らない1。その意味で、情報化は明らかに手段である。手段を使いこなすには、理念やビジョンが必要である。それによって方向性が定まり、手段の使い方に統一性や整合性が生まれる。
上のような認識に基づいて、拙稿では第一に、地域情報化の理念を明確にする。即ち、「生活者」の視点から、生活システムを構成する3つのサブシステム(経済システム、社会システム、政治システム)を有機的に連携させることを情報化の目的とする。そして、情報技術は「戦略的コミュニケーションの可能性」を高める点で意義深く、目的遂行に効果的だと考える。第二に、「地域ポータルサイト」を取りあげ、それが上の理念実現に役立つツールであることを主張する。第三に、ポータルサイトを利用した地域情報システム案を提示し、その可能性と課題を論じる。
ビジネスツールとして捉えられることの多いITだが、実際にはより大きな社会的意義を持っており、それを認識し実践することが、生活者の満足向上及び地域の発展に資する。これが拙稿の主張である。
1.戦略的コミュニケーションの可能性
情報技術はあくまで手段であり、それによって「何を」成すのかという目的が重要である。拙稿では、視点を生活者に置く。つまり地域では「暮らし」が基本との認識のもと、生活する者にとって有効な地域情報化とは何かを考察する。広い意味での社会において、生活面に重点を置いた「生活システム」を想定すると、それは3つのサブシステム(経済システム、社会システム、政治システム)で構成される。これらがバランスをとって機能してこそ生活システムは充実する。現在の問題点は、これらが独立したものとして考えられ、各システムの関係性が軽視されていることである。特に一般の関心が経済システムに偏り、弊害が顕在化しつつある。エネルギー・環境問題などは、社会全体の信頼感をもとにした協力が必要な分野であるが、経済システムで仮定される経済合理人(ホモ・エコノミクス)の集団では解決が困難である。