前市岡 楽正
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2000年09月29日 |
前市岡 楽正
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
CELレポート (Vol.7) |
土井和巳「放射性廃棄物」(日刊工業新聞 1993 年2月10 日発行)
徳山明他「『原発ゴミ』」はどこへ」(電力新報社 2000 年4 月1 日発行)
両書は高レベル放射性廃棄物の地層処分を主題にしている。高レベル放射性廃棄物とは、原発の使用済核燃料の再処理廃液(recycle 方式の場合)または使用済核燃料それ自体(once
through 方式の場合)のことであるが、放射能のレベルが高く,半減期がきわめて長い。現在のところ、放射能が減衰し無害化するまでの間(最低でも1万年)、人間社会から隔離するという方法しかなく、地下の深い地層中への処分が日本を含む各国共通の考え方になっている。ただし、高レベル放射性廃棄物の地層処分を現実に実施した国は未だない。地層処分の信頼性に対する評価は極端に異なっている。一方の極には技術的に解決済みだとする見解があり、他方の極には科学技術によってその安全性を保障するのは原理的に不可能だとする主張がある。この対立は、推進派の一部が主張するように専門家対非専門家の区分に対応していない。両書によってそれが明らかになる。楽観派の徳山明は、原子力委員会専門委員、原子力安全委員会専門委員、地層処分研究開発協議会委員をつとめた人物。慎重派の土井和巳は動力炉・核燃料開発事業団に長く在籍し、OECD/NEA(経済協力開発機構原子力機関)の放射性廃棄物管理委員会の委員も務めた地球科学者である。