前市岡 楽正
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2000年09月29日 |
前市岡 楽正
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.55) |
地球温暖化問題は21 世紀最大の問題の1つである。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1次報告書(1990 年)は次のように述べている。「…人類が本格的な予防及び適応対策を講じない限り、地球の環境には重大かつ破滅的ともいえる変化が生じるだろう」(*1)。自然科学や工学から国際政治や倫理まで、きわめて広範囲な領域にかかわる温暖化問題のかんどころは何であろうか。筆者は...以下のように考える。
(1)問題
[地球温暖化問題とは]
地球の表面温度は、大気と地表面が太陽から受け取るエネルギーと、それらが宇宙に放出するエネルギーが等しくなるような水準に決定される。この計算による平均地表温度はマイナス18℃である。しかし、実際は15℃である。この差の33℃は、大気中に微量に存在する二酸化炭素、水蒸気、メタンなどの温室効果ガスの働きに基づくものであることはよく知られている。温室効果ガスが存在するために、大気は、太陽からのエネルギーはよく通すが、地球からの放射エネルギーは逃がしにくいという性質を持っている。温室効果の存在には疑問の余地はない。他の条件が一定であれば、高い温室効果ガス濃度には高い地表温度が対応し、低い温室効果ガス濃度には低い地表気温が対応する。以上は自然科学的事実である。
地球温暖化問題とは、人間活動に基づく大気中の温室効果ガスの濃度上昇によって、地表気温が上昇することをいう。産業革命以前の1000 年間は各種の温室効果ガスの大気中濃度は一定であったが、それ以降急上昇している。他方、地球の平均気温は過去1 世紀ほどの間に0.3〜0.6℃上昇している。IPCCによれば、両者の関連について、大部分の研究は「観測された温暖化の傾向がすべて自然起源によるものであるとはいえないことを示している」(*2)という。