弘本 由香里
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2000年09月26日 |
弘本 由香里
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住まい・生活 |
住環境 |
情報誌CEL (Vol.54) |
はるか昔、直立二足歩行の道を選んだ人類が手に入れた文明の発達。それは、他の動物に比べて極めて未熟な状態で子供を出産し、長期間に渡って親や社会が子供を保育しなければならないという、リスクと引き換えの産物であったといわれる。
未熟な子供を一人前に育て上げるために、長期に渡るリスクに対応するために、人類は愛情や家族やジェンダーやコミュニティ、その核としての「住まい」という文化を発明したのだと言っても過言ではないだろう。
ところで、人類が手に入れた文明の発達は、やがてもうひとつ、人類特有の産物をもたらした。それが、「老後」である。身体の機能を補う技術や人的な介護によって、人は長い高齢期の生活を、喜びとリスクとともに手に入れることとなった。とりわけ、近代化した社会では、大衆長寿と少産少子によって、人口の高齢化という人口構造そのものの転換に至った。
そこで、かつて人類が自ら選びとった長い保育期のリスクに対して、その課題を乗り越えるための社会と文化を開発してきたように、今、自ら選択した文明の発達、近代化の帰結として到達した高齢社会の課題を乗り越えるために、新たな社会と文化のあり様が模索されていると捉えてもよい。そんな潮流の中で、人と「住まい」の関係のあり方にも新たな展望が求められれいる。