安達 純
1999年10月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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1999年10月01日 |
安達 純 |
エネルギー・環境 |
再生可能エネルギー |
CELレポート (Vol.3) |
東京大学教授で前電力中央研究所エネルギー研究室長の山地憲治氏をはじめ、大学、研究所、シンクタンク、電力会社などの中堅層6名で構成する「原子力未来研究会」の手になるこの本は、電力新報社が主催する平成11年度のエネルギーフォーラム賞を受賞した。
山地氏は、この本の狙いについて、エネルギーフォーラム賞の授賞式で次のように語っている。「原子力は憂鬱な題材である、との書き出しで始まる本書は、閉塞感が増しつつある現状を直視したうえで、これからの基本的政策課題について具体的な政策提言を行うことにより、社会とりわけ原子力界において活発な論議を起こそうという意図で出版したものである。(中略)『路線先にありき』の硬直的な政策を見直し、タブーを排して本質な論議が必要であると考えている」と。
こうした意図のもとに書かれた「どうする 日本の原子力」は、エネルギーフォーラム賞の選考過程で、「原子力未来研究会という匿名性や主張の内容が必ずしも選考委員の意見と一致しない部分があることが難点」との意見もあったが、最終的に、「従来の単なる延長や惰性を断って、改めて原子力のあり方を根本的に見直し、再設定・再展開を図るために不可欠な視点を提供した点」が高く評価されたと言う。
山地氏等の基本的スタンスは条件付き原発推進であり、電気事業の規制緩和が進む中で、原子力の競争力を高めるためには、核燃料サイクルの不確実性を切り離したうえで、軽水炉など成熟段階にある技術を一層改善して、安全性や経済性の向上を図るべきであるというものである。そうしなければ、原発は生き残ることができないという危機感が山地氏等にある。
政府等が進めようとしているFBR計画に対して、山地氏等は批判的であり、現在のFBR実証炉計画は白紙に戻し、ミニマムコストで知識の継承と技術革新能力の確保のための研究開発へ方向転換すべきであると述べている。またプルサーマルについては、プルトニウムの利用方法としては技術的に最も現実的な方法であるものの、必ずしも経済的ではないため、使用済み燃料を再処理せずにそのままの形で貯蓄しておき、将来FBRの実用化に合せて利用する方がベターであるという考え方である。