前市岡 楽正
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
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1999年09月15日 |
前市岡 楽正
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
CELレポート (Vol.3) |
【要旨】
・ 温暖化の影響は超長期的で不確実性が大きい。影響の本格化は次世代以降である。現代 世代は、将来世代のために排出量の大幅削減という大きな負担を負うかべきかどうかという課題に直面している。
・ 現代世代には将来世代の利益を考慮する義務があるかという問に対して、様々な懐疑論と肯定論がある。懐疑論への反論はそう困難ではない。他方、各種の肯定論は説得的であるように思われる。それらは互いに補完的な関係にあるとみられる。
・ 温暖化防止政策への費用便益分析の適用が議論されている。しかしながら、温暖化問題への適用は不可とみるべきだろう。費用便益比率の算出に当たって恣意的な要素が大きく入り込むために政策の<効率性>の判定能力に疑問があるし、世代間の<公平性>が損なわれる可能性も大きい。
・ あらゆる世代の効用は等しく評価されるべきであるし、長期間にわたる1人当たりの消費水準の増加という仮定は現実的でないので、社会的割引率はゼロとすべきである。
温暖化問題における世代間の公平性は、あらゆる世代への平等基準の適用という形で具体化すべきであろう。したがって、現代世代を含む各世代は、自然によって大気中から吸収される量を下回る一定の同一の排出権を持つ。