豊田 尚吾
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2009年09月28日 |
豊田 尚吾
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.90) |
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エネルギー・文化研究所(CEL)では、「住まいとライフスタイルに関する生活意識調査」を2005年から過去5回実施してきた。その際、持続可能な都市、あるいは持続可能な社会の実現を念頭に、私たちが属する組織が生業とするエネルギーをはじめ、それに関係の深い環境問題、そして住まいや食など、広く「生活」に対象を広げつつ調査・研究を行ってきた。
とはいえ、持続可能な社会といっても、持続可能であることだけが、課題解決の十分条件ではない。つらく苦しい生活が持続していても、それが目指すべき社会ではないことは自明であろう。その意味では、そもそも生活者の幸福とは何かということがはじめに問われるべきである。
拙稿では、まず各領域で最近研究が盛んになってきている幸福論の一部を紹介し、それらを持続可能な生活を考える際の参考とする。次にCELの行った生活意識調査のデータをもとに、幸福感の代替指標ともいうべき生活満足度の変化について検討する。そして、生活満足度の低下の基礎的原因として、生活の安心感の確保が不十分であることを問題提起する。また、その解消のためには、生活リスクと付き合う能力、不安を解消する方向に社会を向かわせる能力が必要と提案する。具体的な方法としては、一般に強調される経済力の強化とともに、不確定な事項に関する決定力の強化が必要である。特に後者は日本社会において、その重要性が十分に理解されず、改善の余地が高い、潜在力のある課題であり、生活の中での政(まつりごと)の力を成熟させることが必要だと主張する。