当麻 潔
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2009年09月28日 |
当麻 潔
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.90) |
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持続可能性(Sustainability)の概念は、国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発表した「地球の未来を守るため」における「持続可能な開発」にルーツがあり、持続可能性とは「将来世代のニーズを損なうことなく現世代のニーズを満たすこと」としている。元々は環境問題で使用されていたが、その対象は経済面や社会面に広がっている。企業が持続可能な発展に向けた活動を促進するための国際的なガイドラインであるGRI(Global Reporting Initiative)ガイドラインにおいても、企業活動を「経済面」「社会面」および「環境面」の3つの側面から評価しようというトリプルボトムラインの概念が示され、多くの企業はCSR報告書(持続可能性報告書)でこの3つの側面から企業活動を報告している。さらに最近はこの3つの分野に個人(生活満足度の向上等)を加える考え方もでてきている。
持続可能性において、地球温暖化問題や資源枯渇問題のような環境制約や資源制約の解消と継続的な経済成長は、相反するものであり、持続可能な発展のジレンマとなっている。将来にわたり持続可能性と豊かな生活の追求を可能にするためには、エネルギー消費やCO2等の環境負荷の増大と経済成長の「鎖」を断ち切る、いわゆる「デカップリング(Decoupling)」が必要である。このデカップリングのキーとなるのが技術革新である。エネルギー消費や環境負荷の増大を抑制するには、省エネルギーや再生可能エネルギー導入促進のための革新的技術の開発とその普及が必要である。さらに、この革新的技術が、生活者の満足度を向上させ豊かな生活の実現に寄与するならば、「持続可能性」と「生活満足」を両立させる解のひとつとなる。
本書は、「サステナブル経済」を実現するための具体的な条件を紹介するとともに、サステナビリティについて、5つの側面(エネルギー、環境、食糧、気候変動、生物多様性)から考察している。そして、サステナビリティのための基本戦略として、循環経済から持続可能性経済への転換を図るための経済と環境の分離(デカップリング)およびエコイノベーションの必要性等を提案している。また、我が国におけるエコイノベーションとして、エコプロダクツとエコサービスの事例を紹介している。これらのエコイノベーションの中には、環境負荷を軽減させるとともに効用も向上し、「持続可能性」と「生活満足の向上」に貢献するものが多く含まれている。