〈生活防災〉は、筆者がかねてより提唱してきた防災・減災実践に関する基本原則の一つである。
〈生活防災〉とは、一言で言えば、生活総体（まるごとの生活）に根ざした防災・減災実践のことであり、生活文化として定着した防災・減災と言ってもよい。すなわち、〈生活防災〉の考え方は、防災・減災を日常生活の他の領域とは無関係の独立した活動とはとらえない。むしろ、日常生活を構成するさまざまな諸活動―たとえば、家事や仕事、勉強はもちろん、高齢者福祉、地域環境、子どもの安全といった社会が抱える諸課題に関する活動、個人的な趣味やレジャー、あるいは、地域のお祭り、スポーツイベントなどに関する活動も含む―とともに、防災・減災に関する活動を生活全体の中に融け込ませることを重視する。
同じことを反対側から表現すれば、〈生活防災〉は、防災・減災を日々の生活習慣の中に組み込む（ビルトインする）こと、あるいは、地域社会が日常的に取り組んでいる活動の中に組み込むことを目指す。生活まるごとにおける防災・減災、言いかえれば、他の生活領域と引き離さない防災・減災が目標とされるわけである。